便秘

便秘とは

便秘は水分量が不足して便が硬くなる、腸管が狭くなって排便が困難になる、排便頻度が減少するなどによって生じ、本来排出すべき便が出ていない状態や快適な排便ができない状態を広く含みます。
毎日排便があっても少量しか出ず残便感がある、強くいきまないと出ない、服薬や浣腸をしないと出ないなどは便秘ですが、排便頻度が2日に1度でもスムーズに排便できて残便感などもない場合は便秘ではありません。
便秘は大腸がんなど病気の症状として生じていることがあり、便秘が続くと発症リスクが上昇する疾患もあります。体質と捉えて諦めてしまっている方が多いのですが、消化器内科の専門性が高い治療で解消が可能です。
慢性的な便秘でお悩みがある場合は、早めに消化器内科を受診して便秘を解消し、快適な生活を取り戻しましょう。

便秘の原因

便秘は原因によっていくつかのタイプに分けられます。便秘の治療は原因に合わせて行うことではじめて効果を期待できますので、便秘の原因やタイプを知ることは重要です。

機能性便秘

消化管の機能不全によって生じている便秘です。機能性便秘は、弛緩性便秘とけいれん性便秘、直腸性便秘に分けられます。

弛緩性便秘

消化管は蠕動運動によって内容物を先に送っていますが、大腸の緊張がゆるんで蠕動運動が低下すると便が運ばれるスピードが落ち、大腸に長時間とどまって水分が過剰に吸収され、便が硬くなります。
硬い便は強くいきんでもなかなか出ず、快適な排便ができなくなります。
大腸の緊張低下や蠕動運動の低下は、生活習慣の影響によって生じやすく、運動不足・食物繊維不足、水分不足、腹筋力の低下、ダイエットなどがリスク要因です。便が停滞することで膨満感や食欲低下を起こしたり、排便に困難を伴うことで残便感を生じたりします。
また、肌荒れなどの症状を起こすこともあります。

けいれん性便秘

大腸が過剰に緊張することで小さくてコロコロしたウサギの糞のような便が出ます。
長時間強くいきんでも少量しか出ず、残便感や下腹部の不快感・痛みなどを起こすことがあります。
便秘と下痢を繰り返す場合もあります。過緊張の原因は自律神経のバランスが乱れ、副交感神経が優位になることで生じます。過敏性腸症候群の便秘型や便秘と下痢を繰り返す混合型(交代型・交互型)もけいれん性便秘の1種です。

直腸性便秘

直腸に便が停滞しているタイプの便秘です。
通常であれば直腸に便がたまると便意を生じ、そのタイミングであればスムーズに排便できます。
便意があっても我慢する習慣があると直腸が鈍感になって便意を生じなくなり、直腸に便がたまるようになってしまいます。
トイレに行きにくい環境や排便時に強い痛みを起こす切れ痔などの疾患があって無意識に便意を我慢してしまい、発症することがあります。

器質性便秘

疾患が原因となって、その症状として生じている便秘です。
原因疾患には、腸閉塞、大腸がん、直腸瘤などがあり、腹部手術後に生じる腸管癒着が原因で生じていることもあります。
器質性便秘の場合、自己判断で市販の下剤を服用すると腸管に穴が開く穿孔を起こす危険があります。慢性的な便秘がある場合には、原因疾患がないかをしっかり確かめておくことが重要です。特に、腹痛や吐き気・嘔吐、発熱など他の症状を伴う場合には速やかに消化器内科を受診してください。

便秘が原因となって生じる病気

便秘を解消しないと大腸の中の便は水分をさらに失って硬くなり、排便がより困難になります。
硬い便が直腸にたまると、隙間から下痢状の便が漏れたり、かき出す処置が必要になったりすることもあります。
便秘の固い便を無理に排出するのは切れ痔の発症リスクとなり、便秘と切れ痔は互いを悪化させながら進行し、排便できなくなって手術が必要になることもあります。
また、強くいきむと肛門周辺にある静脈叢に大きな負担をかけ、うっ血が起こっていぼ痔の発症・悪化リスクが上昇します。
便秘が長期間続くと腸管に大きな負担がかかり、大腸の炎症や潰瘍、大腸憩室、胃血性大腸炎を起こすことがあり、腸閉塞などによって大腸粘膜に穴が開く穿孔や腹膜炎など深刻な病気を発症することもあります。

便秘の検査と診断

便秘のはじまった時期、症状の変化、現在の症状、排便頻度や便意の有無、特にお悩みの症状、既往症や服用している薬などを問診で医師に伝えます。
腹部の聴診と触診、腹部X線検査を行い、疾患の関与が疑われる場合には血液検査や大腸カメラ検査を行って確定診断につなげます。
診察や検査結果を踏まえて便秘の原因を判断し、ライフスタイルなども考慮した上で主治医と相談しながら治療方針を立てていきます。

便秘の治療

器質性便秘の場合には、原因疾患の治療を行います。服用している薬の副作用として便秘が生じている場合には、処方の変更を検討します。

薬物療法

消化器内科では様々な作用機序を持った薬の処方が可能であり、多くの薬から選択できますので状態にきめ細かく合わせた処方が可能です。
また新しい作用を持った薬も登場しており、漢方薬も併用できます。
1日1回服用・3回服用といったライフスタイルに合わせた処方や、錠剤・カプセル・粉薬・唾液だけで服用できる口腔内崩壊錠(OD錠)など薬の形状や剤形の選択が可能な場合もあります。
初診時だけでなく、再診時にも気になることがあった場合には主治医に相談することで最適な処方が可能になります。

生活習慣の見直し

便秘は食事や運動などの生活習慣から大きな影響を受けます。また、正しい排便習慣を身に付けることも便秘解消には重要になってきます。無理な制限を行うとそれが大きなストレスになってしまいますので、気軽にできる範囲の改善からはじめましょう。

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