潰瘍性大腸炎について
近年になって罹患者が増加傾向にある潰瘍性大腸炎やクローン病は、腸粘膜に慢性的な炎症を起こす炎症性腸疾患であり、炎症を抑える治療が有効ですが、悪化させてしまうと侵襲の大きい手術が必要になるなど適切な治療を続けることの重要性が高い病気です。
発症の原因がわからないことから根治に導く治療法がなく、厚生労働省の難病指定を受けており、難病医療費助成制度によって医療費の支援を受けられます。
潰瘍性大腸炎とクローン病は症状や経過がかなり似ていますが異なる病気です。
適切な治療を受けるためには正確な鑑別が必要になります。潰瘍性大腸炎は、幅広い年代に発症しますが、若い世代の発症が比較的多くなっています。
潰瘍性大腸炎の症状
- 下腹部の違和感・痛み
- 下痢・粘血便・血便
- 発熱
- 体重減少
- 貧血症状(めまい・立ちくらみ、息苦しさ・頻脈など)
上記のような症状が現れる時期と、症状がおさまる時期を繰り返しながら悪化しますので、炎症を抑える治療で状態を改善し、良好な状態を長く続けることを目的とした治療を続ける必要があります。
おさまっている時期に治ったと誤解して治療を中断してしまうと症状がぶり返して状態が悪化し、重篤な状態になる可能性が高くなります。
また、合併症も多く、腸粘膜の炎症が長く続くことで大腸がんリスクが高い状態ですので、治療に加えて定期的な大腸カメラ検査も不可欠です。
潰瘍性大腸炎と共通した症状を起こす疾患
腸粘膜の炎症を起こす病気は多く、共通した症状を起こしますので、適切な治療のためには専門性の高い検査の結果をもとにした確定診断が不可欠です。早期の適切な治療が必要な細菌性大腸炎や、クローン病との鑑別が重要になっています。
細菌性赤痢
潜伏期間が1~5日程度であり、海外で感染して帰国してから発症することが多く、そこからの二次感染もあります。また、国内での発生では、原因となる赤痢菌に汚染された食品による感染があります。主な症状は、下痢、腹痛、発熱などです。
サルモネラ腸炎
鶏卵や肉からの感染が多く、二次感染や動物を介した感染もあります。吐き気・嘔吐、下痢、38度以上の高熱などの症状が数日から1週間以上続きます。原因となるのはサルモネラ属菌です。
クローン病
症状や経過が潰瘍性大腸炎に極めてよく似ており、どちらも難病指定されています。異なる病気であり、必要となる治療法や食事制限が異なりますので、適切な治療を受けるためには潰瘍性大腸炎とクローン病を正確に鑑別する必要があります。
大腸カメラ検査を含め、専門性の高い検査が正確な鑑別には不可欠ですので、疑わしい症状がある場合にはできるだけ早く消化器内科を受診してください。
潰瘍性大腸炎の原因
はっきりとした原因はまだ明確になっておらず、遺伝的因子、食事、腸内フローラなど、様々な要因が複雑に関与して発症しているとされています。白血球による腸粘膜への攻撃など、自己免疫反応の異常も発症に大きく関与していると考えられています。
潰瘍性大腸炎の検査
症状や経過、食事内容、家族など身近な方の症状の有無、海外渡航歴などを問診で医師に伝えます。
血液検査、便培養検査、大腸カメラ検査、腹部超音波検査、腹部X線検査などから適切な検査を行って診断します。確定診断には大腸カメラ検査が必要であり、びらんや潰瘍の範囲や状態を正確に把握できますので状態にきめ細かく合わせた治療にも大きく役立ちます。
大腸カメラ検査は内視鏡スコープを肛門から挿入して大腸全域の粘膜を詳細に観察し、組織を採取して病理検査を行うことで確定診断が可能になります。
検査する医師の検査経験・技術・知識、使用する内視鏡システム、鎮静剤使用の有無、炭酸ガス送気などにより、検査の精度や心身への負担が大きく変わってしまう検査ですので、専門性が高い検査や治療が可能な消化器内科を受診することが重要です。
診断のポイント
クローン病との鑑別
症状や経過がよく似た疾患ですが、特有の病変があり、病変が生じる範囲も異なるなど、いくつかの違いがあります。
潰瘍性大腸炎では炎症が主に大腸粘膜に生じますが、クローン病では口から肛門までの消化管全域に生じる可能性があり、病変が離れた場所にいくつもできることが多くなっています。
また、潰瘍性大腸炎に比べてクローン病の病変は深くまで及ぶ傾向があり、腸に穴が開く穿孔を起こすリスクが高くなっています。
さらに、クローン病では痔や口内炎などを伴うことも多くなっています。
細菌性大腸炎との鑑別
便培養検査や、大腸カメラ検査で採取した組織の病理検査によって細菌感染の有無や原因菌を確認できます。細菌性大腸炎の場合、抗生物質による治療が有効です。
重症度の分類のための血液検査
潰瘍性大腸炎は難病指定されており、重症度分類で中等症以上と診断されると難病医療費助成制度の対象になります。血液検査で調べる貧血(ヘモグロビン)や赤沈は、重症度の判断に必要な項目です。
潰瘍性大腸炎の治療方法
根治に導く治療法はありませんが、炎症を解消して良好な状態を長く続ける治療が可能です。
症状が生じる期間と解消する期間を繰り返しながら悪化していきますが、症状がおさまっている間も治療をしっかり続けることで状態をコントロールできれば、進行を最小限に抑えながら発症以前に近い生活を送ることもできます。
症状がおさまった時期に治ったと勘違いして治療を中止してしまうと悪化して症状がぶり返しますので注意が必要です。
また、慢性的な腸の炎症が長期間続くと大腸がんリスクが高くなりますので、定期的な大腸カメラ検査は不可欠です。
5-アミノサリチル酸製剤、免疫調整薬などによる治療を中心に、症状がある場合はステロイドを短期間投与して炎症を効果的に鎮めます。
こうした治療は外来で受けられますが、抗TNF-α抗体製剤の使用や、血球成分除去療法、外科手術などが必要な場合には入院可能な高度医療機関で治療を受ける必要があります。
一般的に通常は待ち時間が少なく専門性の高い治療が可能な近所の消化器内科クリニックで検査や治療を受け、入院加療が必要と判断されたら高度医療機関を紹介してもらうといった連携治療が行われています。
難病医療費助成制度について
根治に導く治療法がない難病のある方に対して、国が医療費を助成する制度であり、厚生労働省が指定難病とした病気が対象となります。
難病医療費助成制度は、長期の療養によって生じる医療費負担が大きい患者を支援するために実施されており、治療費の自己負担割合が下がる・上限ができるといった助成が受けられます。
難病指定医による診断書や申請書などが必要であり、重症度によって受けられる助成の内容が変わります。
基本的に中等症以上の症状がある方が対象になりますが、軽症でも長期的な治療が必要な場合には軽症高額該当の助成を受けられる場合があります。
指定難病は2021年に338疾患となっており、それぞれの病気ごとに重症度の判断基準は異なります。
潰瘍性大腸炎の診断と重症度分類
診断基準
臨床症状、検査所見の1項目、生検組織学的検査の結果と、似た症状を起こす疾患が除外できる場合に潰瘍性大腸炎と確定診断されます。また、検査ができない場合も、手術を行った際の観察や組織検査によって診断が可能です。
臨床症状
持続する、または繰り返す粘血便・血便がある・あった。
検査所見
内視鏡検査
粘膜にびまんがあり、血管透見像が消失し、きめが粗いまたは細顆粒状の病変が認められ、軽く触れただけで出血するほどもろい状態や粘血膿性の分泌物が確認できる。 多発性のびらんや潰瘍、偽ポリポーシス(粘膜が脱落して残った粘膜がポリープのように見える状態)が確認できる。
注腸X線検査
きめが粗いまたは細顆粒状の病変が認められ、粘膜表面のびまん性変化、多発性のびらんや潰瘍、偽ポリポーシス(粘膜が脱落して残った粘膜がポリープのように見える状態)が確認できる。ハウストラ(表面のひだ)がなくなった鉛管像、腸管の狭小や短縮が認められる。
生検組織学的検査
症状がある活動期(再燃期)には、粘膜全層にびまん性炎症性細胞浸潤、陰窩膿瘍、高度な杯細胞減少が確認できる。症状がない寛解期では腺の蛇行や分岐といった配列異常や萎縮の残存があり、直腸から口側に連続して確認されることが多い。
似た症状を起こす除外すべき疾患
感染性腸炎(細菌性赤痢、アメーバ性大腸炎、サルモネラ腸炎、カンピロバクター腸炎、大腸結核、クラジミア腸炎など)、クローン病、放射線照射性大腸炎、薬剤性大腸炎、リンパ濾胞増殖症、虚血性大腸炎、腸型ベーチェットなど。
重症度分類
重症・中等症・軽症に分けられており、難病医療費助成制度の対象となるのは中等症以上の場合です。ただし、軽症でも長期間の治療が必要な場合には軽症高額該当の助成を受けられることがあります。 重症と軽症の基準があり、中等症は重症と軽症の中間と定められています。
- 【排便回数】 重症:6回以上/軽症:4回以上
- 【顕血便】 重症:大部分が血液 軽症:血便がないか、微量の血液が排便の半数以下で認められる
- 【発熱】 重症:37.5度以上/軽症:37.5度以上の発熱がない
- 【頻脈】 重症:1分間に90以上/軽症:1分間に90以上の頻脈がない
- 【貧血(ヘモグロビン)】 重症:Hb10g/dL以下/軽症:Hb10g/dL以下の貧血なし
- 【赤沈】 重症:30mm/h以上/軽症:正常
全ての項目で軽症が当てはまる場合は、軽症とされます。 排便回数と顕血便の項目で重症とされ、発熱・頻脈の片方あるいは両方が重症と認められ、全6項目のうち4項目を満たす場合に重症とされます。 軽症でも重症でもない場合に中等症とされます。
軽症高額該当について
軽症でも、12か月の間に1か月の医療費合計が33,330円を超える月が3回以上ある場合に、軽症高額該当とされます。
潰瘍性大腸炎と診断されてから12か月経過していない場合、難病指定医が診断した月から申請月までの間で1か月の医療費の合計が33,330円を超える月が3回以上あった場合に対象となります。
日常生活での注意点
症状の悪化や再燃には食事が大きく関与しています。特に動物性脂肪の過剰摂取は高リスクです。
症状がない時期にも動物性脂肪をとりすぎないように注意しましょう。
また、アルコールや唐辛子などの刺激物の過剰摂取も控えてください。食べ過ぎを避け、毎日同じような時間に栄養バランスのとれた食事をとるよう心がけましょう。
また腸の機能は自律神経にコントロールされていますので、ストレスもリスク要因となります。
休息や睡眠をしっかりとって、できるだけ毎日浴槽にゆっくり浸かってリラックスできる時間をつくり、趣味やスポーツなど熱中できる時間をスケジュールに組み込んでストレスを解消しましょう。
また、軽い運動の習慣化も血行や代謝を改善し、体調を整えるために有効です。
大田区の内視鏡検査を苦痛なく受けることができるクリニックを特徴数で比較
大田区で苦痛の少ない内視鏡検査を行っているクリニックで特徴ポイント11項目のうち、該当特徴数の多かった3院をピックアップしました。
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大田大森胃腸肛門
内視鏡クリニック引用元 https://www.oomori-naishikyo.com/
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三光クリニック
蒲田駅前院引用元 https://www.sanko-clinic.com/
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おばら消化器
肛門クリニック引用元 https://www.obara-clinic.com/
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大腸ポリープ切除に対応しているか - 日曜日内視鏡
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診療
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